ジャパンダイジェスト

歴史が刻んだ思いを感じる 世界遺産「倉庫街」を散策

エルベ川の中州にある倉庫群が立ち並ぶ地区、「倉庫街」(シュパイヒャーシュタット)はハンブルク観光には外せない名所です。2015年、「商館街」と「チリハウス」と共に世界遺産に登録されました。全長約30ヘクタールの倉庫街は19世紀から変わらず世界最大級の規模を誇り、現在もかつての港街の面影を感じることができます。

赤レンガの建物が立ち並ぶ倉庫街赤レンガの建物が立ち並ぶ倉庫街

ハンザ同盟の主要都市として栄えた港街ハンブルクは、18世紀以降に最盛期を迎えました。1888年にハンブルク港が開港し、それに伴い、輸入品(コーヒー豆、カカオ豆、お茶、香辛料、じゅうたんなど)を保管するための倉庫が必要に。そうして次々と建てられた倉庫群地区がこの「シュパイヒャーシュタット」です。現在、倉庫群の一部は、イベント会場やシアター、レストランなどに使われています。あの有名なミニチュアワンダーランド(本誌1187号)もこの一角にあり、いつも観光客でにぎわっているエリアです。歴史に興味があるなら、スパイス博物館、ドイツ税関博物館、シュパイヒャーシュタット博物館などに立ち寄るのも良いと思います。

倉庫街にある自家焙煎コーヒー店倉庫街にある自家焙煎コーヒー店

この日はちょっと観光客になったつもりで、倉庫街を散歩してみました。倉庫を見上げると、どの建物にも屋根のすぐ下に滑車が付いているのに気が付きました。何に使うのかなと思っていたら、ちょうどその滑車で郵便屋さんが荷物を引っ掛けて上に運んでいるところを見かけました。なるほど、こんな感じで船から直接荷揚げできるようにこの滑車を使ったのだと納得です。

さらに歩いていくと、コーヒーの良い香りがしてきました。香りに誘われてお店に入ってみると、そこは自家焙煎コーヒー店の「Speicherstadt Kaffeerösterei」。自家焙煎コーヒーが飲めるほか、コーヒー豆輸入に関する展示コーナーやショップもあります。残念ながら混んでいたので、近くの老舗「カフェ・シュミット」にて、おいしいケーキとコーヒーでちょっと休憩。そしてカフェを出るとポッゲンミューレン橋の上から、運河の中央にある小さな半島に立つ建物が見えました。この「Das Wasserschlöschen」(水のお城)は名前の通り、運河に浮かぶ小さなお城のようなお茶の専門店。お茶の種類が豊富で、レストランも兼ねています。

ポッゲンミューレン橋から見える「水のお城」ポッゲンミューレン橋から見える「水のお城」

倉庫街の建物の多くは、大火災や世界大戦によって破壊され、何度も修復されてきました。建物の中はモダンにリノベーションされていますが、外観はその歴史的遺産として大切にされ、ほとんどが当時の状態に保たれています。倉庫街を歩いていても観光地にありがちな俗っぽさがなく、ひっそりとした静けさに包まれているのは、ハンブルクがたどった歴史に対するリスペクトなのかもしれません。

岡本 黄子(おかもと きこ)
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。

 
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