食料品を選ぶとき、皆さんは何を条件としていますか? 条件としては値段や原産地、あるいは見た目などありますね。確かにつやつやして、おいしそうな色の方が目に留まるし、香りにも惹かれます。最近は「いやいや、私は健康的な食生活を心掛けていて、添加物一切なしの食品を選んでいます!」とおっしゃる人も増えているのではないでしょうか。そんな健康に気を遣っている人におすすめしたいのが、「食品添加物博物館」(Deutsche Zusatzstoffmuseum)です。ここでは知られざる「隠れ食品添加物」についてたっぷりと学ぶことができます。
棚一杯に並んだ添加物のびん
この博物館は膨大な数の添加物が分類され、展示されています。まず入ってすぐ目に付くのが、壁面全体に描かれている添加物の歴史。紀元前2000年、古代エジプト人は、蜂蜜と酢に食料を漬けて保存していたそうです。それが1500年頃から保存料と着色料として硝酸ナトリウム(E251)が使用され始めました。これはソーセージなどの肉の加工品に入っている場合が多いです。日本では1909年にうま味成分であるグルタミン酸が作られました。これらを見学すると、人間は人類誕生から食料を保存し、改良することに懸命に取り組んできたことが分かります。
シミュレーションできる「添加物スーパーマーケット」
そして同館がユニークなのは「スーパーマーケット風」に展示されていること。まるで本物の店のように各食料品の棚があり、その食料品に含まれる添加物の成分、効果、また身体に及ぼす影響などについてパネルで読むことができます。実際のスーパーでここまで添加物の説明が表記されていたら安心だなと思ったのですが、多分買う人がいなくなってしまうかもしれません。
レジで添加物をチェックできる
添加物について一通り見て回ったら、今度は実際に買い物をするシミュレーションをしていきます。やり方は食料品棚にある「無添加そうな食品」を選んで、レジに行き、実際の店のようにバーコードをスキャンします。すると、出てきたレシートに記載されているのは金額ではなく、なんと選んだ食品の添加物。私が選んだ食品9点のうち4点が添加物なしでしたが、後の五つは全部で13種類もの添加物が入っていました。逆に無添加の食品は本当に少ないということが分かります。また、添加物の表記によっては、それが添加物であることが不明確な名称が付いた「隠れ添加物」もあり、それについての展示も興味深かったです。ビデオやオーディオを使って説明を聞くことができますが、ガイドさんが案内してくれる日もあるそうです。
この博物館は、ハンブルク市の卸売市場の広い敷地内にあり、市内からのアクセスは良好です。惜しいのは、分かりにくい場所にあること。現在敷地内の工事中のせいか、私が見学をしていた間の訪問者は私一人だけでした。しかし、とても大事なミッションを持つ博物館なので、ぜひ一度訪れてみてください。
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。