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春の訪れを告げる 「スティント」食べ放題!

スティントは、日本のワカサギに似た小さな魚です。秋の終わり頃、冷たい北海から暖かい場所を求めて移動を始め、2月半ばにようやくエルベ川に流れ着き、産卵します。その年の気候と水温に左右されるので多少のずれはありますが、産卵期の4月初めくらいまで、エルベ川で毎日新鮮なスティントを捕ることができます。逆にいうと、たった約1カ月半の間だけしか食べられない魚なのです。この時期になると、ハンブルクや近郊の魚屋さんやレストランで「スティント食べ放題!」や「スティント、入りました!」という看板を見かけます。

揚げたてが最高においしい揚げたてが最高においしい

スティントは体長約15~20センチ、グレーがかった銀色でキュウリのような匂いがするため、「キュウリ魚」とも呼ばれます。昔は貧しい食事とされていたスティントですが、今は北ドイツの春の名物となって親しまれています。そういえば、「スティント・ファング」(スティント漁獲)という名前の通りが、ハンブルク港の近くにありますが、これは19世紀初頭のスティント大漁を記念して名付けられたそうです。

最後の一匹、もうお腹いっぱい!最後の一匹、もうお腹いっぱい!

スティントの最もポピュラーな調理法は、フライです。小麦粉の代わりにライ麦粉をまぶして、バターとベーコンの油で揚げ焼きするのが伝統的で、付け合わせはゆでジャガイモ、ポテトサラダ、炒めたジャガイモなどです。「Stint satt!」(スティントたっぷり!)とメニューにある場合は、スティントをお代わりすることができます。

老舗レストラン 「Zur Post」老舗レストラン 「Zur Post」

私がスティントを食べたのはかれこれ20年も前。毎年「今年こそ食べたい」と思っているうちに、シーズンが終わってしまっていたのです。しかし今回やっと食べに行くことができました! せっかくだから船に乗って、エルベ川の対岸にあるアルテス・ランドへ。ここは新鮮な魚がたくさん捕れるのです。ハンブルク、ブランケネーゼの小さな船着き場から約25分、Cranz(クランツ)で下船し、徒歩約3分で着く創業1725年の老舗レストラン「Zur Post」(ツア・ポスト)にやって来ました。地元の人々や、漁師たちからも評判の、エルベ川で捕れる魚料理専門店。夏場は、川の流れを眺めながら野外で食事することもできます。早速「スティント・ザット!」と、付け合わせにゆでジャガイモを注文しました。この店は、お代わりは2回までとなっています。この日、店内はスティントを食べる人でいっぱい。給仕の人たちが「お代わりは?」と聞きながら、揚げたてのスティントを盛った大皿を手に、テーブルの間を忙しそうに回ります。フォ-クやナイフは使わず、手でぱりぱりっと食べるのが通な食べ方。熱々がとってもおいしく、意外にさっぱりしているので、1皿目はあっという間に、2皿目もサクッと平らげました。3皿目はさすがに、ペースが落ちましたが完食! まさに「Satt!」(お腹いっぱい!)になりました。来年の春も忘れずにまた食べに行きたいです。

岡本 黄子(おかもと きこ)
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。

 
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