ピクシー(Pixi)絵本をご存知でしょうか? ドイツで子ども時代を過ごされた方、ドイツで子育てをされた方、あるいは子育て真っ最中の方など、きっと出会ったことがあると思います。このミニ絵本は、アドベントカレンダーに入れたり、誕生日プレゼントにしたりと、さまざまなシーンで使われます。小児科の待合室などでも、子どもたちのために置いてあるのを見かけます。小さくて手頃だからどこにでも持って行けて、子どもの小さな手でもめくりやすいのが特徴です。そんなピクシーは、今年で70歳。現在ハンブルクのアルトナ博物館で、ピクシー絵本の70周年記念展覧会「Pixi –Die Ausstellung 70 Jahre Kleine Bücher」が8月18日(日)まで開かれています。
ピクシーのキャラクターたちが勢揃い!
ピクシー絵本を生んだカールセン出版社は、デンマークのカールセン本社の子会社として1953年にハンブルクに設立されました。当時の社長は、全ての子どもたちに読書の楽しさを知ってもらいたいという強い思いから、できるだけ安価で良質な絵本を作りたいと考えていました。それで思い付いたのが、10×10センチの正方形で、24ぺージのミニ本です。この形とぺージ数は70年前から変わっていません。値段は当時50セント、現在は99セントです。
最初に出版されたピクシー絵本「Miezkatzen」
本の名称は英語の「pixie」(こびと、妖精の一種)から取って「Pixi」になりました。そして1954年、初のピクシー絵本が出版されました。タイトルは「Miezkatzen」(子猫ちゃん)。記念展でも展示されていましたが、とってもかわいかったです!
ピクシー絵本では、現在に至るまでさまざまなお話が描かれており、その数なんと3000種類。年間売り上げは1400万部だそうです。赤と白の水玉模様のサロペットを着たいたずら小熊「ペッチー」や、「ピクシー」という名前の赤いとんがり帽子の小人さん、90年代には活発な女の子「コニー」のお話が始まりました。ほかにもネコやウサギ、王様やお姫様、消防自動車やトラクタ-などなど、子どもたちが大好きなキャラクターのお話が、この小さな正方形の中に詰まっているのです。
会場でお孫さんに読み聞かせをするおばあちゃんの姿も
展覧会では、初版本から現在に至るまでのピクシー絵本が時代ごとに展示され、その歴史と変化を見ることができます。いくつかの原画も展示されていました。会場の真ん中にはピクシー絵本でいっぱいのプールがあって、中に飛び込んで好きな本を選んだり、椅子に腰掛けて読んだり、訪れた子どもたちが自由に楽しそうに遊んでいました。70年経っても、正方形のサイズとぺージ数が変わっていないように、「全ての子どもたちに本を!」という思いは今も続いているようです。
Pixi – Die Ausstellung 70 Jahre Kleine Bücher:www.shmh.de/ausstellungen/pixi
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。