ハノーファーにあるエンターテイメントシアターGOP。7月14日まで上演中の「LA VIE」に、ヨーヨー世界一に2度輝いた日本人のNaotoさんが出演しています。この公演は、もともと2020年3月にミュンヘンで上演されていましたが、コロナ禍のロックダウンによって4日間でお蔵入り。コロナ禍が落ち着いてから再び全国6カ所を周り、現在最終地のハノーファーに来ています。ストリートをテーマにアクロバットやパフォーマンスを披露している11人のうちの一人がNaotoさん。2023年、ニューズウィークの「世界が尊敬する日本人100」に選出されたヨーヨー名人です。
ヨーヨーで観客を魅了するNaotoさん
ヨーヨーは客席から見ると糸が3メートルもあるのではないかというくらい、自由自在かつ複雑な動きをしますが、実は1メートルそこそこ。次々と繰り出される高度な技と愉快なテンポに、観客席から喝采が上がります。NaotoさんのハノーファーGOP出演は10年ぶり。当時はGOP自体が初出演だったので気負いがあったといいますが、「今回はいい感じで自信を持ち、リラックスしつつ毎日を楽しみたい」と語ります。
広島県福山市出身のNaotoさんは、9歳のときにお兄さんと一緒にヨーヨーを始めました。当時は世界中でヨーヨーブームだったとか。14歳でアーティストを志し、大道芸を中心にしたパフォーマンスをしていました。19歳のときに群馬県のサーカス学校へ入り、一層ヨーヨーに集中するようになります。
2011年からフランスやドイツの新人発掘コンテストで入賞したのをきっかけに、Naotoさんは10年ほど前にドイツに移住しました。 GOPをはじめ、劇場やクルーズ船、サーカスなどで幅広く活躍しています。本誌1191号でご紹介した、同じくヨーヨー世界一のShu Takadaさんと2人で作った演目「ToyToyToy」は、2023年に英国のオーディション番組「Britain’s Got Talent」で準決勝まで健闘しました。
GOPの舞台で出演者たちと
そんなNaotoさんの趣味はヨーヨー。「ショーのためのヨーヨーの練習で疲れると、休憩のために別のヨーヨーで遊ぶ」というほど、ヨーヨーが体の一部になっています。スポンサーからの提供もあり、自宅には数百ものヨーヨーがありますが、「重量バランスや色、マテリアルが違うとフィーリングが違う」といいます。
また、ドイツの生活について「日本では理想とされる人生が決まっていて、そこから外れるのに勇気がいる。列車に乗ると英会話、婚活、ダイエットなどの宣伝広告がずらっと並び、そういう価値観を押し付けられているようにも感じました。ドイツはそこから外れてもいいし、いろいろな選択肢があります」と語ってくれました。Naotoさんはさまざまな媒体で情報発信をしていますが、私は特にVoicyの「Naotoのドイツでショーアーティスト生活」が気に入りました。日々思うところを毎日更新していて、とても奥が深いです。
Naotoさんのウェブサイト:https://linktr.ee/yoyonaoto
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。ジャーナリスト、法廷通訳士。著書に『なぜドイツではエネルギーシフトが進むのか(学芸出版社)』、共著に『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿(光文社新書)』、『夫婦別姓─家族と多様性の各国事情(筑摩書房)』など。