日独家庭の我が家の長女は、左足に先天性内反足を抱えて生まれてきました。これは足が変形する病気で、すぐに治療しないと歩くことが困難になります。およそ1000人に1人の発生率といわれていて、男児に多く、両足と片足の場合があり、症状にも軽度から重度まであります。娘は左足首から先が内側に曲がって生まれてきました。
妊娠中、ドイツで産婦人科に通っていた私は、20~22週目に詳細検査(Feindiagnostik)を受けるようにすすめられました。一般の産婦人科よりもさらにこの検査だけを専門的に行っている診療所での診察では、ダウン症や身体の未発達などが分かります。掛かり付けの産婦人科医はおよその予想をしていたのか、詳細な検査で娘に先天性内反足があるという結果を知ると、動揺している私たちに出産後すぐに必要な治療について適切にアドバイスをしてくれました。
出産は小児形成外科のあるライプツィヒ大学病院をすすめられ、産婦人科は内反足の治療を出産後すぐに始める手配をしてくれました。そこで出産の翌日から、娘の足には矯正ギプスが巻かれ、生後8週間にアキレス腱を切る手術をしました。その後も矯正ギプスと矯正具による治療が続き、生後4カ月からは理学療法(Physiotherapie)に通い始めました。この理学療法は、薬による治療ではなく、身体が健康な状態になるようにマッサージや運動を行うものです。医師による治療には限度があるため、特に内反足のような筋肉の病気には日々のマッサージの積み重ねが結果的に大きな成果を生みます。私たちも週に2度理学療法士に娘の足を診てもらい、教えてもらったマッサージ方法を1年以上にわたり毎日朝と夜に繰り返してきました。
理学療法(Physiotherapie)の診療室
今年で7歳になる娘は、週に1度理学療法に通い、靴の中に足底板を入れる矯正を続けていますが、歩行にも運動にも全く支障はありません。元気に毎日走り回っています。これも、妊娠中から出産後すぐに適切な治療に導いて下さった方々のおかげであり、理学療法が重要な役割を果たしていると、とても感謝しています。そして毎月の健康保険料が高額であると感じる一方で、妊娠中から出産、娘の治療、手術、理学療法まですべてが保険で賄われていることを考えると、やはりドイツのシステムはしっかりとしていると思います。
部屋の中には理学療法にお世話になった子どもたちの写真が並ぶ
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
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