暖冬だった2016年とは違い、今年の1月は何度も寒波が訪れる、冬らしい冬になりました。私はもともと日本の雪国で育ったため、寒さや雪はあまり苦にならず、日本のしんしんと降り積もるしっとりした雪とはまた違った美しさがある、ドイツのさらさらなパウダースノーに魅せられています。これは暖房完備の住宅があるからこそ言えることではありますが……。
さて、バイエルン州はドイツの南部に位置しますが、背後にアルプス山脈がそびえているため北ドイツよりも冬の気温は低い傾向にあります。山間部ではスキー、平野部ではノルディックスキーやウオーキング、湖が凍ればスケートなど、ウインタースポーツを楽しむ環境には事欠きません。ミュンヘン近郊のエアディング(Erding)では、毎年「三王来朝(さんおうらいちょう)」の祝日である1月6日に寒中水泳大会が開かれますが、今年は過去一番の寒さで、主催者は事前に会場となる湖に張った厚さ約8cmの氷を割り、泳ぐのに十分な広さを確保したとのこと。マイナス1度の水温の中、26人の参加者は元気に完泳したそうです。
凍結した湖上に漂う霧が、幻想的な美しさを見せるアイプゼー
数十年前には、川が凍結するほどの寒さに見舞われることもあったミュンヘンですが、温暖化の影響か都市化が進んだためか、近年はそこまで気温が下がることはないようです。それでも、寒い日が続くと多くの湖は凍り、湖の氷の厚さが増すと、たくさんの人が氷の上の散歩や、スケートなどのスポーツに繰り出します。一方で、氷が割れて水中に落下する事故も、残念ながら近年増加傾向にあるそうです。このような事故に遭わないよう、また、遭ってしまった場合にどうすべきか、水上警備隊(Wasserwacht)からの情報をご紹介します。
自宅近くの凍った湖で、子どもからお年よりまでスポーツを楽しむ人々
まず、凍った湖などへは絶対に一人で行かないこと。また、氷の厚さを過信しないこと。自然界では、水の状態や周囲の環境(水源や川からの流入の有無、工場や生活排水などによる水質の違いや地形)によって、氷の厚さが場所によって異なることがあるためです。そして、なるべく岸から近い位置に留まること。もしも氷が割れてしまった場合は、自分の周囲の氷を拳(こぶし)もしくは肘で割って岸辺を目指すこと。ただし、これは想像するよりも力が必要だということです。冷たい水の中では、あっという間に体力や柔軟性が奪われます。また、重たい冬用コートや靴も、動きの妨げになります。パニックに陥らず、落ち着いて的確に行動する必要があります。同行者は、警察や消防などの助けを呼ぶこと。また、慌てて遭難者に近寄ることはせず、自分の安全を確保した状態で、近くに小屋などがある場合には備え付けのロープや木製のはしごなどの補助道具を使うこと。遭難者に近づく場合には体重が氷の上で分散するように、腹ばいになること、などです。
安全に注意を払いながら自然の状態を観察し、その美しさと厳しさを堪能しましょう。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。