シュトゥットガルトの東方、約15キロのところにワインシュタット(Weinstadt)という町があります。ワインの町という意味の名前からも想像できるように、ワイン畑に囲まれた絵本のような町です。こののどかな田舎町で年に一度、数千人もの人々が集まる夏祭りが開催されています。その名も「光るワイン畑」。
夕日の中のワイン畑
今年7月30日、初めてこの祭りに参加してきました。当日は真っ盛りの夏日で、20時ころに会場に到着したのですが、まだ太陽がギラギラと大地を照りつけていました。同じ電車から降りてきた乗客のほとんどがワイン祭りの会場に向かって歩いていきます。その道すがら、そこへさらに人々が合流し、駅から住宅街を通り抜けて延々と数キロもの人の列が、会場であるワイン畑へと行進していきます。場内に入場してからも、どこを見渡しても人、人、人。普段はほとんど人がいないはずのワイン畑ですが、この日ばかりは非日常の光景が広がっています。
光るワイン畑
会場内にはワインや食べ物の屋台があちこちに立ち並びます。まずはグラスワインを一杯買って、飲みながら場内を散策してみました。空高く上がっていた太陽も徐々に沈み始め、夕日がワイン畑をほんのりと照らします。広大な大地を背景に、じゅうたんのように柔らかな緑の山がかなたまで広がっています。ブドウもたくさん実っていて、今年も豊作のようです。
畑には数カ所にステージが設置され、映画のオープンエアでの上映や、エキゾチックなファイヤーショー、音楽のライブ演奏が行われている舞台もあります。人々は思い思いの場所に腰を掛けて、音楽に耳を傾けながらワインを飲み、会話を楽しんでいます。
太陽がすっかり沈み、夜空に星が輝きだした頃、ワイン畑がついに光り始めました! 斜面の下の方から赤、緑、青の光が畑を照らしてまぶしいほどです。遠目に見ると山にカラフルな縦じま模様が描かれたかのようでシュールな感じもします。ワインの杯を重ねながら、場内を散策します。
面白かったのは、かなりの数の来場者がワインホルダーを持っていたこと。ワイングラスの丸みにピタリと合う形状をしたナイロン製のホルダーに、グラスの脚を通して使います。これを首からかけると手を使わずに運べるという優れものです。ドイツ国内のほかの祭りと違って、ここのグラスは飲み終わった後で屋台に返すことができません。一杯目のワインを飲むときに、ワインと一緒にワイングラスを1.50ユーロで購入し、その後はいろいろな屋台でおかわりをするというシステムです。山の中の会場をあちこち歩くわけですから、両手が解放されていると便利ですね。夜中の0時直前には打ち上げ花火も上がり、普段は真っ暗な小さな田舎町のブドウ畑が、この日ばかりはこうこうと輝いていました。
www.weinstadt.de/leuchtender-weinberg
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com