夏の暑さが収まり、過ごしやすい季節になってきました。そんな気持ちの良い日に、久しぶりにエスリンゲンの図書館に行ってきました。シュトゥットガルトの超モダンな新しい図書館とは180度違って、エスリンゲン図書館の建物はもともと1232年中世の時代に建てられた修道院の付属施設でした。この建物は中世の時代にはPflegehofといって、街の中にある修道院と街の人々の接点を担ってきた建物で、そういったパブリックな使われ方をされてきた歴史があります。現在はかつての修道院はなくなってしまいましたが、図書館は今日にも市民に開かれた場所として受け継がれています。
図書館の入り口
石畳が多く残る旧市街のど真ん中に何気なくあるから素敵です。2階建ての建物ですが、真ん中に小さな中庭を囲む回廊のような、かと言ってすべて真っすぐではないという少し不思議な間取りになっています。本棚の向きもいろいろなので、迷宮とまでいかなくても、くねくね曲がりながら本棚の間を通って進む感じです。ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』に出た中世の図書館を少し連想させます。また小説の図書館と違うのは、ここには窓が多く、いろんな方向から光が入ってくるので、実に明るく、空気もよく通っていて居心地がいいです。天気の良い日には、飲み物を注文して、中庭に座りながら新聞を読んだり、友だちとおしゃべりも楽しめます。
中庭の眺め
窓の外も良い風景
図書館の玄関から入って、まずは新聞・雑誌コーナーとカフェテリアがあります。それから、1階部分は主に、料理やスポーツ、旅行関係などの実用書です。キッズスペースも設けられていて、絵本や漫画はもちろん、コンピュータゲームも置いてあります。日本の漫画はドイツ語訳ではありますが、なかなか充実したラインナップです。小さな椅子や遊具があって、いつも親子連れがまったりとくつろいでいます。2階はそのほかの分野で、DVDやCDの貸出もしています。学生時代は年間使用料が無料で、よく利用していました。
特に世界の名著のDVDをたくさん借りて観ていました。『戦争と平和』『傲慢と偏見』『ファウスト』『アンナ・カレーニナ』……有名な文学名著のDVDがずらり。実はこれらの本を読んだことはありませんが、ここで簡単にたくさんの名著に触れることができました。ほかにも、伝記物をよく観ていました。さまざまな有名アーティストや歴史上の著名な人物の生涯が映画形式でコンパクトに収められていて、とても魅力的。一人でも気軽に来ることができるので、これからの寒い季節には特におすすめです。
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com