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オイティンの野外オペラ祭

夏の間、ドイツ各地で開催される音楽祭は、音楽愛好家にとってこの時季の楽しみの1つとなっています。ハンブルク以北では、毎年恒例のシュレスヴィヒ=ホルスタイン音楽祭が有名ですが、同州のオイティン(Eutin)という町では、この音楽祭が始まるはるか前の1951年から野外オペラ祭(Eutiner Festspiele)が続けられています。

ハンブルクからオイティンまでは、電車で北へ約1時間15分。ここはドイツ・ロマン派の作曲家カール・マリア・フォン・ヴェーバーの生誕地です。当地の野外オペラ祭は、彼の没後125年に当たる1951年の命日に、その代表作『魔弾の射手』の上演で開幕しました。

舞台と観客席
舞台と観客席の間の緑のシートの下にオーケストラピットがあります

野外オペラの舞台は、リューベックの領主司教の宮殿庭園の一角に設けられ、観客席の背景は湖という、素晴らしくロマンティックな雰囲気の中にあります。『魔弾の射手』の舞台設定は森の中となっており、観客席の周りや舞台の背後に背の高い木々がそびえ、風が吹くたびにさわさわと音を立てる野外劇場は、まさにこの演目にうってつけの場所と言えるでしょう。少しずつ日が落ちていく夕暮れ時の雰囲気も情緒豊かです。これまでに開催されてきた63回のオペラ祭のうち、実に42回でこの演目が上演されてきました。

今年の演目はヴェルディの『トロバトーレ』とミュージカルの『アナテフカ』。私は『トロバトーレ』を鑑賞してきました。2幕で歌われる鍛冶屋の合唱は、オペラに全く興味のない方でも、一度はどこかで耳にしたことのあるメロディーでしょう。本物の炎が燃え上がる中での鍛冶のシーンは、野外の舞台ならでは。それに続くジプシーのアズチェーナが「炎は燃えて」とアリアを歌う頃には、炎は最大級に燃え盛り、迫力満点でした。

アズチェーナ役
炎が燃え盛る中でアリアを歌うアズチェーナ役

今回の舞台では、レオノーラ役のソプラノ(女性の主役)とアズチェーナ役のメゾ・ソプラノの声の厚みやテクニックが圧巻で、それに比べて男性陣は少し精彩に欠ける印象でした。いずれにせよ、野外オペラは天井も反響板もない中で、自分の声だけで勝負しなければならないので、歌手にとっては過酷な舞台。しかも雨が降ったら悲惨です。オーケストラピットには楽器保護のために覆いが掛けられていますが、舞台は野ざらしなので、濡れながら歌わなければならず、「歌手は喉が命なのに、風邪を引いたら大変……」と心配してしまいました。一方、野外オペラには途中で鳥が鳴くなどのハプニングが付きものだからこそ、観客により一層ライブの楽しみを与えてくれるのかもしれません。

http://eutiner-festspiele.de

井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?

 
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