ドイツの育児制度は州によって異なりますが、今回は私の住むライプツィヒ(ザクセン州)の保育ママ制度についてご紹介したいと思います。幼稚園の中にもクリッペ(Kinderkrippe)と呼ばれる託児制度があり、一般的に3歳以下の乳児はクリッペか保育ママ(Tagesmutter)のどちらかに預けることになります。ベビーブーム真っ只中のライプツィヒでは、子どもの数に比べて幼稚園の数が全く足りておらず、必然的にこの保育ママに子どもを預ける親も多くなっています。クリッペでは、2人の保育士が約15人の乳児を担当する一方、保育ママの場合は面倒を見る子どもの数の上限が5人。ほとんどの場合は保育ママが自宅に子ども用の部屋を設え、家族のように過ごします。
保育ママの自宅内に備えられた子どもたちの部屋
それぞれの保育ママは子どもを預ける時間について、親の希望に沿う形でフレキシブルに対応してくれます。また、毎日の昼食や間食も栄養のバランスを考慮したメニューを用意してくれるほか、おむつを外すトイレ・トレーニングにも辛抱強く付き合ってくれます。大抵の場合、定期的に音楽やスポーツの時間を設けており、天気の良い時は散歩や遠足に連れて行くなど、乳児教育に大切なプログラムを準備、実行しています。
保育ママと中庭で遊ぶ子どもたち
保育ママになるためには、青年局(Jugendamt)の認可が必要で、まずは60~80時間の認定コース、さらに80時間の養育コースを受講します。その後、青年局の職員が自宅を訪問して整備の確認やアドバイスを行います。部屋の整備については、例えば室内温度は最低20度に保つこと、コンセントの穴は塞いでおくこと、階段には柵を設けることなどが規定されています。
保育ママには、青年局に登録している人とプライベートで子どもを預かっている人がいます。青年局に登録している保育ママへの支払いは、例えば1人目の子どもを1日8時間(週40時間)預ける場合は月約180ユーロ(2013年現在)で、これに約60ユーロの食事代が加算されます。時間は、1日最低4時間、ないし1週間に最低20時間預けることが原則です。
一方、プライベートの保育ママに預ける場合、掛かる費用は月約800ユーロです。クリッペと異なり、保育ママは個人の都合に左右される職業なので、親が望むように子どもを預けられないなどの短所もあると聞きますが、すばらしい保育ママに出会えたら、3歳までの大事な時間を家族のように親密な関係の中で過ごしてくれるので安心です。我が家でも2歳になる娘を保育ママに預けていますが、日々元気に成長しており、子どもが過ごす環境にも、とても満足しています。
福岡県生まれ。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の建築設計事務所に所属し、10年に「ミンクス.アーキテクツ」の活動を開始。11年よりライプツィヒ「日本の家」の共同代表。www.djh-leipzig.de