法律とビールが大好きな国、ドイツ。中でも、ここバイエルン州には「ビアガーデン条例」なるものまであることをご存知ですか?
1999年4月に公布されたこの条例は、ビアガーデンの営業時間を一方的に規制されたことに怒った2万5000人の市民が、「ビアガーデンの伝統を守ろう」とデモを行ったことから誕生しました。そこには「ビアガーデンの定義」も定められています。定義のポイントは2つ。面白いので実際の様子とともにご紹介しましょう。
1つ目は「緑に囲まれた環境であること」。ビアガーデンはミュンヘンの至る所で見られます。長く厳しい冬を越えてやっと光の季節を迎えたものだから、太陽への喜びはひとしお。みんなこぞって屋外に席を求めます。だから緑が豊かな公園や、ちょっとした広場の木陰には夏の間長テーブルとベンチが誂えられますし、レストランも中庭をビアガーデンとして開放しています。なるほど、どこも緑が多くて開放的。大きなマロニエの葉が心地よい木陰を作っています。
チャイナタワーとヴァイツェンビール
2つ目の定義は「食べ物の持込みが許可されていること」。理由として「ビアガーデンは社会的コミュニケーションの場であるため」と述べられています。食べ物の持込みを許可することによって、あらゆる階級の人が利用することができるべきと考えられたのです。
確かにセルフサービスである上に持込みができるとあれば、余計な出費もかかりません。気軽にいろんな人が来られるわけです。散歩の途中の老夫婦、賭けトランプに興じるオジサマ達、足を投げ出して読書する学生、週末は子どもを連れた家族が多くなります。大きなビアガーデンには子どものために滑り台などの遊具が設置されているので、子どもも一緒に楽しむことができ、親は気兼ねなくおしゃべりとビールを満喫できるのです。
席は相席です。席に着いたら隣のグループと目を合わせてにっこり乾杯するのも良いでしょう。そこからおしゃべりが始まり、新しい繋がりが生まれることもあります。
ビールは大概1ℓジョッキで提供されています。そんなにたくさん飲めないと思っていても、照りつける太陽の下では、あっという間にジョッキが空になってしまうから不思議です。お酒の弱い人にはオレンジやりんごジュースもありますし、レモネードとビールをミックスしたラードラーという飲み物も好んで飲まれています。
ビアガーデンは市民の伝統的な憩いの庭であり、あらゆる立場の人が集まる社交場です。緑に囲まれた居心地の良いビアガーデンでジョッキを傾けるのが、夏のミュンヘンの醍醐味です。
子どもだって立派なお客様。飽きさせない工夫が施されています
日本地ビール協会ビアテイスター。日本での7年間の看護師生活の間にビールの魅力に取り付かれ渡独する。現在はミュンヘンに拠点を置いて美味しい情報を発信中。「ビアテイスターのドイツビール&ワイン紀行」http://gogorinreise.blog34.fc2.com/