想像がふくらむ芸術の秋、子どもが主役のアートのお祭りが日本宮殿内で行われています。「キンダー・ビエンナーレ」と名付けられたお祭りでは、展示のほか、ワークショップやコンクールなど多彩なプログラムが用意され、多方面からアートに関われるようになっています。子どもが中心となって作られる自由な芸術の空間は空想と物語にあふれ、大人も心躍る場でした。
展示室は全部で9つあり、それぞれの部屋で子どもが作品を作ったり、さまざまな表現を体験できるようになっています。虹を思わせるような多色が特徴の造形作家シュテファニー・リューニングの部屋では、子どもたちが鮮やかな色のついた氷を使って絵を描きます。色が溶け出す氷という画材に思いがけない表現が生まれ、子どもたちは面白そうに画面と向き合っていました。また、部屋全体が映像の水族館となっている部屋もありました。壁に映し出される巨大な水槽を泳いでいるのは、子どもたちが描いた色とりどりの魚たち。日本の芸術テクノロジスト集団「チームラボ」による「お絵かき水族館」では、描かれた魚や空想の生き物たちが機械に取り込まれ、次の瞬間には目の前を生き生きと泳ぎ出します。さらに画面の生き物に手を触れれば素早く逃げていく仕かけ付き。自分の描いた作品が動いていることに皆大興奮でした。別の部屋には大きな円形の台があり、ガラスの台面に立って下をのぞくと、まるで井戸のように奥深く穴が開いているように見えます。実は台の中に鏡が設置され、穴がどこまでも続いているように見えるトリックでした。視覚で遊ぶという実験に、子どもたちは不思議な顔をしながらのぞき込んでいました。さらに別の部屋では一面オレンジ色に塗られた壁に手を置くとその跡が残るようになっています。熱によって色が変わるペンキに手の体温が伝わり、少しの間黄色に変色します。コツをつかむと手でさまざまな形を作って模様を作る子もいました。
お絵かき水族館の個性的な魚たち
視覚トリックの井戸
壁に手を当てて跡をつける子どもたち
子どもが主役の芸術祭は、元々シンガポールの国立美術館が企画し、2017年5月に開催したものでした。子どもたちの頭の中にある多彩なアイデアが形となったら、とたくさんのプロジェクトが生まれました。科学的な要素も含まれた実験的な展示に自分の想像力を加えることで、表現の幅が多様に広がっていきます。夢中になって表現している子どもたちの姿が印象的な芸術祭でした。
キンダー・ビエンナーレ: www.skd.museum/ausstellungen/kinderbiennale
※2019年2月24日まで日本宮殿にて開催。入場無料
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。