シュトゥットガルト近郊の町エスリンゲンで、先月、玉ねぎ祭りが開催されました。ワイン祭りとか、秋の収穫祭などはよく聞きますが、玉ねぎ祭りって変わってますよね。
旧市街に建ち並ぶかわいらしい木組みの家々でお馴染みのエスリンゲンですが、実はこの町と玉ねぎには、とても深い関わりがあったようです。それは、この地に伝わる中世の伝説に基づいています。
ある日、人間の格好をした悪魔がエスリンゲンの町にやって来て、市場で物売りをする女性にりんごを要求したそうです。しかし、悪魔の馬のような足と硫黄の臭いから、女性は悪魔の変装を見抜き、とっさに玉ねぎを渡しました。悪魔はそれをかじると、こう叫んだそうです。「こんなものがお前らのりんごだというのか? まるで辛い玉ねぎじゃないか! これからはお前らの町を、エスリンゲンではなくツヴィーベル(玉ねぎ)と呼んでやる!」。それ以降、エスリンゲン人(Esslinger)はZwieblingerと呼ばれるようになったそうです。ちなみに、今日でもそう呼ぶことがあるそうです。そういうわけで、ここエスリンゲンでは、玉ねぎ祭りが毎年開催されるようになりました。
さて、この玉ねぎ祭りの名物はといえば、Zwiebelkuchen。玉ねぎケーキです。ケーキといっても甘いケーキではなく、玉ねぎがぎっしり詰まったキッシュのことです。細かく刻んで透き通るまで炒めた玉ねぎを、卵や生クリームなどのフィリングに混ぜ、イースト入りのタルト生地の上に載せてオーブンで焼き上げます。ドイツやスイスでよく食べられる名物料理の1つで、よく、フェダーヴァイサーという発酵途中のぶどうの発泡酒と合わせて食します。
出来立ての玉ねぎケーキ、いかがですか
今年のお祭りの屋台は、シュトゥットガルトとエスリンゲン、およびその周辺の8つの郷土料理レストランによって、料理と飲み物が提供されていました。8月13日には、お祭りのハイライトとなる「Trachtentag」というイベントもありました。当日の午後4時から8時の間に、ドイツの民族衣装ディアンドルやレーダーホーゼンで訪れた客には全員に、無料の飲み物や抽選券が配られたとか。さらに、ラジオ放送局Die Neue 107.7のDJが生放送をしたりと、たいへんな盛り上がりをみせたようです。
玉ねぎが使われていないメニューもあります
このイベントには参加できませんでしたが、お祭りの期間中に友人を大勢誘って、屋根付きの屋台で楽しい会話をしながら、フェダーヴァイサーと玉ねぎケーキを堪能しました。フェダーヴァイサーの爽やかな酸味と玉ねぎケーキのほんのりとした甘みがよく合い、「食べること」がひときわ楽しい秋の始まりを感じました。
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
www.kakueinan.wordpress.com