今回は、遠出する時間はないけれども、ちょっと週末にリフレッシュしたいという方のために、ドレスデン中心部の喧騒から少し外れた、息抜きにぴったりの場所をご紹介します。
ドレスデンの北西にはラーデボイル(Radebeul)があり、その先にはワイン畑が広がっていて、陶磁器で有名なマイセンへと続きます。その途中、ドレスデン市民御用達のショッピングセンター「Elbepark」のすぐ隣とも言えるほど近くに、ウビガウ地区(Übigau)があります。このウビガウは、スラブ語では「Vbegowe」と呼ばれ、1324年の文献に初めて登場します。エルベ川が大きく蛇行する箇所に接しており、この地区からは緩やかに流れるエルベ川の風景と、遠くにはお馴染みのドレスデンの中心街の美しいシルエットを望むことができます。
以前、本誌の「散歩のススメ」のコーナー(2010年2月12日発行・803号)で、ラーデボイルのケッチェンブローダ(Kötzchenbroda)をご紹介した際、間口が狭い切妻が道に面していて、奥に細長い家々が並ぶ、特徴ある通りの様子を写真とともにお伝えしましたが、ウビガウ地区でも、これと同様の造りの建物が並んでいます。これは中世後期に端を発する、「袋小路村(Sackgassendorf)」と言われる形式の集落(Siedlung)です。切妻を道路側に置いて規則正しく並んだ家々は、まるで積み木の家のよう。新築の住宅であっても、その外観は周囲の伝統的な家々に倣って建てられています。
切妻を道に向けた伝統的な造りの家々
さて、氷点下の日々が続く1月の週末に、家族皆でエルベ川沿いの凍てつく遊歩道を歩いて、ウビガウ地区へと出掛けました。エルベ川の脇にあり、ウビガウ地区の一番端に位置するビアレストラン「リンデンシェンケ(Lindenschänke)」が、この週末の散歩の目的地。リンデンシェンケは150年以上の歴史を持つレストランで、2002年にこの地域一帯で発生した大洪水によって冠水してしまったものの、その後修復工事を経て、現在では古めかしく温かみのある木の内装および家具がとてもメルヘンチックな雰囲気を醸し出すビアレストランになっています。
ビアレストラン「リンデンシェンケ」の内部
レストラン入口の重い木の扉を開ければ、そこには典型的な「中世ドイツのメルヘン」の世界が広がっています。夏場はテラス席から悠々と流れるエルベ川と見渡すことができるようになっていて、こんなところで寛いだら、さぞかし気持ちが良いだろうなと思いました。小旅行とまではいかないけれど、週末のミニ脱出の行き先をお探しの方に、ぜひお勧めしたい場所です。
Lindenschänke:
www.wirtshauslindenschaenke.de
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/