コロナ禍で年末帰国できず、ぽっかりと空いた時間。以前から気になっていた、ハンブルグ名物「Franzbrötchen」の食べ歩きツアーを決行しました。ハンブルクから北側のパン屋さんには必ずあるのがこの菓子パン。クロワッサンをぺちゃんこにしたような平らな形で、生地はパイとパンの中間のような感じ。シナモンシュガーがたっぷりとかかっていて、シナモンロールにも似た味わいです。このパン、ハンブルクのパン屋の売り上げナンバー1ともいわれ、とても愛されているのです。ハンブルク市立歴史博物館では、過去に何度かフランツブロ-トヒェンのコンテストが行われ、ハンブルグ中のパン屋さんたちがその腕前を競い合い合ったことも。
ナンバー1の貫禄 Die kleine Konditorei
フランツブロ-トヒェンの歴史は、さまざまな説があります。19世紀にハンブルクがフランス領だった頃、フランスから伝わった白パン(おそらくクロワッサン)を作ろうとして、バターを溶かしたフライパンにシナモンと砂糖を入れて、パンの両面を焼いたのが始まりだとか。またスウェーデン名物のシナモンロ-ルから、ハンブルクのパン屋さんがヒントを得て作ったという説も。あるいはハンブルグ市のアルトナ地区がデンマ-クだった頃、ヨハン・ヒンリッヒ・ティ-レマンというパン職人が初めてフランツブロ-トヒェンを焼き、「フランツパン屋」と呼ばれるようになったとか。そのほかにも、酔っ払いがパン生地の上に座ってしまって、ぺちゃんこになったのが元祖とか、13世紀にフランシスコ会修道士が貧しい人に配ったパンが「フランツパン」と呼ばれていたとか。何はともあれ、フランツブロ-トヒェンは長い歴史を経て今日までハンブルクっ子にずっと親しまれてきたわけです。
おふくろの味Körner
さて、今回はハンブルクにある5件のパン屋さんのフランツブロ-トヒェンを食べてみました。「Die Kleine Konditorei」は過去2回、フランツブロ-トヒェン大会で1位に輝いた正統派です。オリジナルコーヒ-が有名でおしゃれな「Elbgold」のフランツブロートヒェンは上品な感じで、庶民的なパン屋「Körner」は甘さ控えめの懐かしい味がします。グルメショップ「Mutterland」は、スウェーデン風のシナモンロ-ルが売り。そして中央駅にあるフランツブロ-トヒェン専門店「Franz&Friends」は、バリエーションがとにかく豊富です。
種類が豊富なFranz & Friends
それぞれ味の方はというと、どれもおいしかったのですが、強いて言えば食感や甘さに微妙な違いがあるくらいで、あまり大きな差は感じられません……。なぜこれほど愛されているのか、解明できないまま帰途につきました。食べ過ぎて、もう当分フランツブロ-トヒェンは見たくないです(笑)。
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。