4月の大イベントといえば、イースタ-(復活祭)。2月半ばを過ぎると、店頭には早々とイースタ-のデコレ-ションやウサギのチョコレートが並びます。ドイツでは、イースタ-はクリスマスと並ぶ大事な家族のお祝い事。子どもたちも、卵に色を塗って飾るなど、イ-スタ-をワクワクしながら待ちます。キリスト教会やクリスチャンにとっては、「灰の水曜日」からイースタ-までの7週間は、とても大切な意味がある時期です。教会暦だとカーニバルのハイライトとなる「バラの月曜日」の3日後の水曜日が「灰の水曜日」(今年は2月22日)といわれ、ここ北ドイツでも特別な礼拝を行う教会も多いようです。
「灰の水曜日」には、現在はあまり見られませんが、シュロの木の枝を燃やした灰と墨で、信者の額に十字を記す儀式があるそうです。灰は「朽ちるもの」、「生のはかなさ」を象徴していて、カーニバルで最高潮に達した世俗での生活を悔い改めるという意味があります。この日からキリストの復活までの約40日間(7週間)が、「受難週」または「断食の時」。中世のキリスト教徒はこの時期に断食し、聖なる生活に励みました。現在では、受難週に何か一つ自分の好きなもの、あるいは好きな習慣を断つことを勧めたりします。例えばお酒を断つとか、スマートフォンをいじるのを止めるとか。このプチ断食(断習慣?)をして、キリストの十字架の意味をより深く感じながら復活祭を待つわけです。
受難週7週間を意味する7本のろうそく
シュレ-スヴィヒ=ホルシュタイン州の小さな村モアレ-ゲにある聖ミカエル教会でも、灰の水曜日の夜に礼拝があります。人々はこの礼拝にカーニバルの衣装を着て出席すると聞いて、珍しいので私も行って来ました。「灰の水曜日に全ては過ぎ去った! 」(ユップ・シュミッツ作曲)という愉快な曲と共に、ぞろぞろとカーニバル衣装に身を包んだ人々が入場。写真を撮り合ってわいわいしているので、「え? これから礼拝が始まるの?」とびっくりです。
聖ミカエル教会
しかし黒い装束をまとった牧師さんが祭壇へ上がった途端、静かになりました。「神の家ですので、帽子は取ってください」と言われて、参加者たちはすごすごと派手な帽子を取りました。「祭りは終わり! 今日から清い生活に励みなさい!」というお説教をするのかなと思っていましたが、牧師さんは「もし何か受難週に断つのなら、『失望すること』を断ちましょう。私たちが光となって輝くために」というお話をされました。戦争や地震など、暗い出来事の多い今の世に相応しい希望のメッセ-ジだと思いました。皆さんも、楽しいイースターをお迎えください!
記念撮影をする愉快な人々
ハンブルグ郊外のヴェーデル市在住。ドイツ在住38年。現地幼稚園で保育士として働いている。好きなことは、カリグラフィー、お散歩、ケーキ作り、映画鑑賞。定年に向けて、第二の人生を模索中。